※新組織改編前に作成した記事です

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吉田 孝志さん

  • 日本電気株式会社 データサイエンス研究所
  • 企業科学専攻 システム・マネジメントコース

Q.まずは入学の動機を教えてください。
A.これまで研究職や技術企画職として働いてきたのですが、将来も研究職として働き続けるために博士号を取得した、という気持ちがありました。また、修士課程を修了してから時間も経っていますので、最新の知識やスキルを学び直したいという希望もありました。そんな二つの欲求を実現できる場としてGSSMを選びました。仕事との両立を希望していましたので、職場から通勤できることも重要な条件でした。
Q.GSSMでの研究内容を教えてください。
A.博士論文の題目は「スノーボール調査とネットワーク分析に基づくエージェントベース普及モデル」です。じつは入学以前、会社の研究として消費者のクチコミ行動がイノベーション の普及において果たす役割について分析するためにEdy と mixi を題材としてスノーボールサンプリングと呼ばれる調査手法を採用したアンケート調査を実施していました。イノベーションの代表的理論はRogers (1962)ですが、その理論では説明できない事例としてイノベーションの普及を二軸(オピニオンリーダー・マーケットメイブン)で想定して実施し、この調査結果を再現する数理モデルを構築できないか検討していたのですが、当時検討していたモデルでは普及の際の現象をうまく説明することができませんでした。倉橋節也先生の助言をもとに、エージェントベースモデルという手法を採用して数理モデルを構築したところ、普及の際の現象をうまく説明できるようになり、博士論文としてまとめることができました。
Q.博士論文の研究で大変だったことはありますか。
A.私は比較的スムーズに研究が進んだのですが、唯一大変だったのは研究初期でした。入学当初の研究計画では経営関係のシミュレーションをテーマにするつもりだったのですが、いざスタートしてみるとデータ取得が難しいことが判明したのです。それでも研究を進めることはできたのですが、前述の通り、倉橋節也先生の助言をもとに研究テーマを変更しました。私自身はそのデータで博士論文が執筆できるとは想像もしていなかったのですが、結果的には良かったですね。

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Q.学生生活についてはいかがでしたか。
A.入学動機の一つに「学び直し」がありましたので、1年目は積極的に授業を受けました。2年目からは研究に集中し、論文執筆に加えて学会発表なども行いました。最近はアカデミックの世界でも実務家の参加を歓迎しており、学会のメイン担当にさせていただくなど貴重な経験をすることもできました。また、ゼミは毎週開催されていましたので、それに参加しつつ、研究についての教員とのディスカッションは進捗状況に応じて個別に実施していただきました。ちなみに私は入学初年度から授業と論文作成を並行して進め1本目の査読論文は1年次のうちに投稿したのですが、査読者からのコメントは研究を進める上で大変役に立ちました。
Q.GSSMで学んでみて特に良かったことはありますか。
A.統計やデータ分析の最新手法を学べたことです。統計の知識は大学で止まっていたのですが、この10数年で大きな進歩があり、それを学べたのは有意義でした。また、これまでとは異なる人的ネットワークが構築できたのも良かったですね。じつは主指導教員を経営系の先生にするか、あるいはシミュレーションを専門にしている先生にするか、ずいぶん迷って同期たちに相談に乗ってもらいました。この部分でも同期の存在はありがたかったです。

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Q.今後のキャリアについて教えてください。
A.引き続き研究職として仕事に取り組んでいきたいです。当社では博士号取得者は上司の指示を仰がなくても独自に研究を進めることができます。テーマ選定なども比較的自由にできますので、これまで以上に仕事がやりやすい環境を手に入れることができました。現在の私は、カメラ映像に映し出された人の動きをリアルタイムでシミュレーションし、予測する研究に取り組んでいます。これまでのシミュレーションは過去のデータ利用が一般的でしたが、リアルタイム映像のシミュレーションはセキュリティ分野など応用範囲も広く、今後の需要に期待しているところです。
Q.これから進学を希望する方へのアドバイスはありますか。
A.博士課程の3年間は、あっという間に過ぎてしまいますので、入学前から先行研究のレビューなどは進めておいた方が良いと思います。研究内容によって異なるかもしれませんが、分析ツールなども予め調べて習得しておくと入学後の研究を進めやすくなります。オープンキャンパスへの参加もお勧めです。私はオープンキャンパスで教員の研究テーマや使用している分析ツールなどの情報収集を行い、合格発表後から統計の教科書を使って予習に着手し、GSSMの授業や分析で使用頻度の高いRの習得にも取り組みました。事前準備のおかげで遠回りをすることなく博士課程を有意義に過ごすことができました。
ありがとうございました。

 

(2017年2月取材)
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