※新組織改編前に作成した記事です

kobayashi_top

小林 武さん

  • 平成25年度修了(博士課程)
  • 名古屋商科大学 経済学部 教授

受験動機を教えてください。

私はフランスのビジネススクールでファイナンス修士を取得したのですが、そこではファイナンスや数理の基礎的な知識は習得することができましたが、仕事をしていくなかで、もっと深い知識を習得して実務に応用したいという気持ちが湧いてきました。GSBSを選んだ理由は、仕事上の知り合いの複数人がGSBSのOBで、良い評判を聞いていましたし、理系の先生が多くいらっしゃることも決め手になりました。また、受験動機ではありませんが、私は以前、勤務していた企業にはPh.D保有者が多く在籍しており、私の研究についての話題で話が弾むことが多くありました。そういった点でも博士課程に進学して良かったと思っています。

研究生活はいかがでしたか。

研究計画書と最終的な博士論文の内容が大きく変わる方もいらっしゃいますが、私の場合は、研究計画書のテーマと博士論文のテーマが変わることなく、最終的な博士論文を「本邦社債スプレッドの期間構造モデルとその応用に関する研究」としてまとめることができました。実は当初の研究計画発表においては、社債のポートフォリオ分析といったことも研究対象にしていたのですが、結局、そこまでには至りませんでした。研究ではテーマを絞ることも重要ですので、社債スプレットの期間構造モデルというテーマだけで、十分に博士論文として仕上げることができました。また、研究指導は信用リスクモデルの指導経験をお持ちの牧本先生にお願いしたのですが、数理的な分析手法だけでなく、論文の書き方などについてもしっかりと指導していただきました。私はかつてフランスの大学院で「ヘッジファンドのポートフォリオ最適化」というテーマで修士論文を書いた経験があります。しかしながらフランスでは論文の書き方について詳細な指導は受けませんでしたので、GSBSに入学してから論文の書き方や構成、まとめ方などについて本格的に指導していただいたと認識しています。

博士取得まで10年かかりましたが、大変ではありませんでしたか。

GSBSでは、博士課程の修了生が講師として、自分の体験を在校生に話すという授業があります。私はその準備を兼ねて、10年間の研究生活を振り返ってみました。その間に転職をしたり、子供が生まれたりとプライベートは大きく変化しましたが、研究はほぼ継続して続けていたことが改めてわかりました。私の研究対象である社債スプレッドの期間構造は、株のように情報を検索したら直ぐにデータが入手できるものではなく、様々な銘柄の社債について異なる残存期間の債券を時系列に蓄積していくという作業が必要で、データ収集と期間構造の推定に想像以上に時間が必要かかってしまいました。しかも日本の社債市場は1990年代後半から、大手企業を中心にやっと期間構造が観測できるようになった状態で、時系列データの蓄積と加工には時間が必要でした。最終的に修了まで10年かかりましたが、大学院から遠ざかったとか、研究に悩んで挫折した、といった時期はまったくありません。振り返ってみますと、家族と牧本先生の温かいサポートに支えられ、少しでも結果が出ていればなんとかなるという楽観的な考え方をもち続けたことが幸いし、学位取得ができたのだと思います。また、10年間にアカデミックな研究動向にも変化がありました。欧米を中心に自分の研究に近いテーマの研究が徐々に着目されてきていましたので、最後の数年は、自分の研究への手ごたえも感じていました。自分の問題意識とアカデミックな動向がずれていると、論文査読にも影響が出てしまいます。アカデミックな研究では、広く先行研究をサーベイして、その先行研究を土台にどれだけ自分の独自性を主張できるかが重要であることを認識しました。

授業はどうでしたか。

応用確率論、統計や金融工学など研究に関連する分野を中心に受講しましたが、経営戦略関係も興味本位で受講しました。私は修士課程でもファイナンス修士でしたので、今回は経営関係の授業を受講したいと思っていました。経営戦略は門外漢だったこともあり、大量の資料の読み込みやレポート作成は大変でしたが良い勉強になりました。その他にも人工知能など、とても興味深く受講しました。

仲間から影響を受けたことはありましたか。

以前の職場にも同級生がいましたし、金融周りの人でGSBSやGSSM出身者は大勢いましたので、入学前から情報交換や刺激を受ける機会が多くありました。入学後は、牧本研究室で定期的に研究に関連した関心分野の専門書の輪講を行っていて、そこにはいろんな分野の人が参加していましたので、それも刺激になりました。特に入学して数年は輪講にも頻繁に参加し、いろんな方と知り合うことができました。

仕事と研究を両立するための工夫を教えください。

在籍している間に、転職し、子供も二人生まれましたので、仕事でも、研究でも、時間の有効活用を常に意識していました。研究に集中したいときには、通勤や通学時に先行研究を読んで、あとは夜の時間を活用しました。子供が小さかったこともあり、子供が寝てからの時間を研究に充てていました。その時間にデータ整備、分析作業や先生とのマンツーマンゼミの準備をしていました。家族との時間を作ることにも苦労しましたが、土曜日は授業やゼミを入れずに、週末の昼間は家族との時間を持つように努めました。

一番の思い出は何でしょうか。

牧本先生とのゼミが一番の思い出です。先生と話し合うことで、一人でもんもんと悩んでいた課題や分析手法などが明らかになりましたし、煮詰まったり、方向性が間違っていたりするときには、先生との対話がなにより有効でした。先生の指導は厳しいのですが、ビジネスマンとしての私の立場を理解した上で接してくださったので、次につなげるためのモチベーションにもなりました。これからも実務に即した研究を続けたいと思っています。先生からも研究をブラッシュアップするための投げかけもいただいていて、博士を取得して終わりではないのも、GSBSの良いところだと思います。

博士前期課程 修了生の声 一覧へ戻る
上に戻る