※新組織改編前に作成した記事です

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永井裕久(教授)

海外調査や海外での指導経験が豊富で、博士課程では「組織行動論」、「人材開発」を担当している永井裕久教授に、研究領域や授業内容について話してもらいました。(インタビュー実施年月:2013年5月)

研究分野を教えてください。

組織行動論になります。この学問は、組織の中の人間行動について、行動科学的に分析する学問です。心理学、社会学、文化人類学なども含めた学際的アプローチから、組織内の人間行動を研究し、実務への適応を考える研究領域です。具体的には、リーダーシップ、モチベーション、パーソナリティ、組織ダイナミックスやチームパフォーマンスなどについて研究しています。また、特に関心をもっている研究テーマは、グローバルリーダーシップであり、これは海外派遣者のマネジメントやグローバルリーダーシップ・コンピテンシーなどについての研究です。グローバルリーダーシップ・コンピテンシーについては、海外に赴いて働くときに、どんな職務遂行能力が必要になるのかを探索的に研究してきており、リサーチユニットとしては、世界13カ国の国際比較を通して、各国で必要とされるコンピテンシーの構成やパフォーマンスが上がるコンピテンシーの要因などを研究しています。例えば、ニューヨークで高業績のグローバルマネジャーが、中国で同じ行動をとったからといって、同様のパフォーマンスを上げられるとは限りません。現地法人における文化的背景や組織環境、一緒に働く人とのコミュニケーションや対人関係の組み合わせによりパフォーマンスを規定する要素が変わるからです。が現地でハイパフォーマンスにつながるのかを研究しています。先ほどの13カ国の比較研究においては、日本以外の12カ国のビジネススクールとの共同研究で、各国のグローバルリーダーを調査しています。これは日本企業に役に立つインプリケーションを出すことはもちろんですが、各国でグローバルに活躍できる人材を育てていく、そのためにどんな能力要件、環境、制度が必要なのかを明らかにしていくことを目指しています。

授業について教えてください。

博士課程では「組織行動論」、「人材開発」を担当しています。「組織行動論」は、リサーチメソッド(定量分析、定性分析、面接法、ケーススタディなど)について、標準的なテキストとそのメソッドを用いて書かれた論文を教材にして、講義とディスカッションを交えて行っています。授業の最後には、各受講生が自分自身の研究計画書を作成し、ブラインド(匿名式)レビューを行っています。一方、「人材開発」は実務的なトレーニングメソッドについて、アカデミックな観点から、例えば、研修成果の測定、教育方法、グローバルリーダー育成のための研修プログラムの構築といった内容について解説しています。
また、私は国際プロフッェショナル専攻(専門職修士課程)という全科目を英語開講で行う専攻に所属し、授業を担当しています。こちらでは「Organization behavior」と「Professional Manager」という科目を担当しており、アクションラーニング(行動による学習)という教育法を用いた授業です。受講生には、状況を設定して、どういう判断や意思決定を行い、行動するのかを模擬体験してもらいます。国際プロフッェショナル専攻は、学生のダイバシティ(多様性)が高く、3割の学生が外国人です。アジアだけでなく、や欧米出身の学生もかなりの比率で在籍しています。国が変われば仕事に対する価値観も異なりますので、同じものを見ても、違う見方をすることを体感できる非常に貴重な機会になっています。国際プロフッェショナル専攻に所属する日本人学生も海外留学経験者や外資系勤務者など国際化した人が多いのが特徴です。多様な価値観や発想や経験をもつ受講生が一同に会することにより、同じ環境に対して異なる見方や状況判断を通して、互いに刺激になり、また積極的に発言することでプレゼンスが高まりますので、日本人だけの学習環境とは大きく異なる学びの場となっています。

指導方針について教えてください。

博士課程の学生は、自立した研究者として、自身の研究テーマを決めていますし、その内容は本人が一番理解しているわけですから、指導教員の役割は、伴走者として並走し、道に迷わないように、アドバイスすることだと考えています。社会人院生には、いままでやってきたこと活かして、実務でもアカデミックでも、どうフィードバックしていくのかを念頭において研究されると、研究領域と職務領域の相互関係をうまく機能させる、双方向に流出効果(spillover effect)があると思っています。また、社会人学生全般に言えることですが、仕事と家庭と研究の優先順位や時間を賢くマネジメントすることが重要だと思います。また、私自身は国際プロフェッショナル専攻と兼務していますので、同専攻との相互恩恵としては、国際的なネットワークが活用できることが挙げられます。海外の研究者との交流が図れますし、教員の海外調査に参加できるチャンスもあります。私自身は、英国、米国、フィリピン、中国の大学の客員教授を歴任しました。昨年までの2年間は、グローバルリーダーシップコンピテンシーの研究を兼ねて、トルコのビジネススクールに2年間勤務し、週12時間の授業を担当し、昨年帰国しました。このような私の海外教育経験なども必要に応じてお伝えできるかと思います。

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