※新組織改編前に作成した記事です

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山村明義さん

  • 平成18年度修了(修士課程)
  • 東京地下鉄株式会社

受験動機を教えてください。

帝都高速度交通営団は、平成16年に民営化され、東京地下鉄(東京メトロ)になったのですが、その頃の私は人事部の課長として、社員の意識改革に取り組んでいました。技術畑出身でしたから、日々の仕事のなかで経営系の知識不足を痛感することが多くありました。それで、きちんとしたビジョンを持って仕事に向きあうために、経営系の知識を学びたいと考えるようになりました。

GSSMを選んだのはどうしてですか。

受験前にさまざまな雑誌でビジネススクールについて調べたのですが、「経営を科学として捉える」という建学の精神に共感したこと。経営について、単なる手法を学ぶのではなく、体系的に学べるというのが大きな理由です。他にも働きながら学べる夜間の大学院であることや勤務先の本社が上野にあるため、通学がしやすいことも理由でした。

受験勉強について教えてください。

小論文については過去の入試問題を集めて、実際に記述する訓練をしました。また、経営やマーケティングなどを単発で学べる学校に通って、基礎知識を習得しました。当時、私は47歳でしたので、頭を柔らかくする目的で流行していた「脳を鍛えるドリル」などもやりました。研究計画書は、社員の意識改革をテーマに作成しました。実際の口述試験では、研究計画についてかなり厳しく指摘され、冷や汗をかきましたね。合格の知らせが届いたときは、とても嬉しかったのと同時に、仕事と両立しながら本当に修了できるのだろうと身が引き締まりました。

授業はいかがでしたか。

授業科目はとても多様で、経営系・システム系・QA系を学んだのですが、最初はわからなくても掘り下げていくことで、本質が見えてくる面白さがありました。GSSMでは統計学や金融系の理論を学ぶために、行列式や分散などを用いるので、数学の基礎(ビジネス数理)を最初に学びます。久しぶりに数学を学びなおして、数学の体系が美しく、普遍性に満ちており、世界共通理解が可能になっていることに感動しました。さらに奥が深いと思ったのは会計系科目で、簿記にはじまり、会計ディスクロージャー、管理会計と基礎から最新理論までを学ぶことができ、経営を考えるための礎になりました。

学生生活はいかがでしたか。

2年間を通じて、一番キツかったのは、1年の1学期でした。研究の基礎となる基礎科目を中心に受講しましたが、宿題も多く大変でした。早めに修了要件に必要な単位を取得しようと欲張ったこともあって、火曜日から土曜日まで週5日、通いました。体重も4Kgくらい減って、同級生や家族も心配してくれました。2学期以降は、学習のペースがつかめてきて、さらに同級生とも仲良くなり、楽しいことも多くなりました。

同級生はどんな方々でしたか。

私は鉄道会社で終身雇用的な風土に慣れていますが、同級生にはコンサルタントやシンクタンクなどの方も多く、転職を通じてスキルアップしていくタイプの方もいました。懇親会や休憩時間などの会話はとても新鮮で刺激的なものでした。前向きでチャレンジングな人生を送っている同級生たちと出会え、とても刺激を受けましたし、切磋琢磨の良い機会になったと思っています。また、業界によってプレゼンテーション資料にも個性があって、参考になることが多かったですね。卒業旅行として勤務先の保有する伊東の保養所に皆で行って、深夜まで今後のことを語り合いました。研究でお世話になった佐野ゼミでも、自主ゼミや宿泊研修が恒例になっていて今でも参加させて頂き、刺激を受けています。

研究について教えてください。

私の研究は、従業員の再社会化がテーマです。当初は、主指導教員である佐野享子先生から、研究動機について徹底的に問われました。こうして、あいまいな動機が排除され、歩むべき道が見えてきました。研究に着手した当初は苦痛をともないましたが、「自分が何を明らかにしたいのか」「そのためにはどういった研究手法が必要なのか」が徐々に明確になっていきました。最初は何を指摘されているのかさえも理解できないこともありましたが、数日考えるうちに、ハッと閃くこともあり、それが楽しみでもありました。深く考える姿勢がこのときに身についたと思います。最終的に実施した研究では、勤務先の社員、数百人へアンケートを実施。その結果をもとに仮説を構築し、分析を行ないました。220名分の有効回答を分析データ用に処理するのは大変な作業でした。GSSMでは複数の教員が研究を指導してくれますが、戦略論がご専門の河合忠彦先生から「従業員の自律的な関与の仕方(エンパワーメント)についても整理した方が良いのでは」とのアドバイスをいただき、研究内容がさらに深まりました。また、統計論がご専門の椿広計先生からは、統計分析手法、分析結果の解釈可能性についてご指導頂き、研究の厳密性が高まったと感じています。

仕事や家庭との両立の工夫を教えてください。

直属の上司に通学する旨を伝え、人事部のメンバーも協力してくれました。ただし人事異動時期の人事はとても忙しく、授業のあとに会社に戻って徹夜したこともあります。また、家庭との両立についてですが、毎日夜遅く、土曜も家にはいない状況で、特に研究が佳境になる2年次は、ほぼ研究に没頭しましたので、妻には迷惑をかけたと思っています。当時、子供は中学生と高校生で、なんで今さら勉強なんて、と思っていたようです。でも、今では息子もお父さんのようにいずれは研究を深めてみたいと言っていますし、このような生き方もあるという参考にはなったかと思います。

修了して身についたことはありますか。

研究結果を踏まえ、社員の研修機会の増加を会社に提案し、実現しました。その後、鉄道統括部長になってからは輸送改善計画などに取り組みましたが、ここでもGSSMで学んだオペレーションリサーチなどの知識が活きました。また、大きなプロジェクトの企画を通すには社内各部署の理解が必要です。仮説を立て、計画書を作成し、それをプロゼンテーションし、承認を仰ぐというプロセスは、GSSMでの研究と類似しており、授業や研究で培ったさまざまな知識やスキルが役に立ちました。実際、GSSMを修了してから今日まで数百億円規模のプロジェクトを何件か企画・提案し、承認され、実現に移されています。実際に社会人大学院を経験してみると、働きながら学ぶのは目的意識が明確でないと厳しいものです。またGSSMは修士論文の研究に重きを置く大学院でもあります。そういう意味では、ビジネスの問題解決手法を学ぶというより、人生や仕事にどう向き合い、いかに自分を他者との関わりのなかで活かしていくかというスタンスを、精神論でなく、科学的思考方法として磨きこむ場だと思います。最初は大変でしたが、学びや研究は、喜びに変わり、いったん身についた科学的思考法は修了後も揺るぎのないものになりました。

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