確率論を活用してビジネスの不確実性に対処する
理論とデータを駆使して課題解決をサポート

 ビジネスでは、どの分野であっても不確実性がついて回るため、それをいかに予測して対処するかが大きなテーマともなっています。牧本直樹教授は、確率論に時間的な概念を加えた確率過程論を専門としており、株価のように時々刻々と変動する量を数学的にモデル化、解析することで、ビジネス上の課題解決にもつなげるための方法を研究しています。修士課程では、「ビジネス数理」「オペレーションズ・リサーチ」「計量経済学」の科目を担当し、理論やデータ分析が問題解決へつながることを実感してもらうことを心掛けています。

 私の主な専門領域は、確率論およびで、私自身は理論研究が主ですが、学生指導ではビジネス課題への応用が中心となります。具体的には、数理ファイナンスや金融時系列などの「ファイナンス」がひとつのコアとなり、確率モデルやシミュレーションなどを使って分析する「オペレーションズ・リサーチ」がもう一つのコアになります。時系列とで言えば株価も一つの例ですが、これは毎日変動していくわけで、そういった経時的に変化する対象を数学的にモデル化して解析するための理論がバックボーンとなっています。
 確率の考え方は、ファイナンスはもちろんですが、その他の分野でもさまざまな形で利用されています。どの分野でも将来を確実に予測することはできませんから、不確実性を考慮しながらその中で意識決定を考えていく必要があります。例えば金融以外のビジネスでも広告投資や設備投資を行いますが、調査をして投資すればうまくいくかといえばそうではありませんよね。利益にせよコストにせよ,あるいはリスクにしても不確実な要素がたくさんあるわけで、確率的な理論とデータを組み合わせて不確実性の大きさを計量化し、その結果にもとづいて適切な意思決定ができるようにサポートをしていくわけです。

Naoki Makimoto

 GSSMで担当している科目は、修士課程では「ビジネス数理」「オペレーションズ・リサーチ(以下、OR)」「計量経済学」で、博士課程では「確率過程総論」と「応用確率論」です。ビジネス数理については、入学して最初に受ける基礎的な科目で、どの分野を研究していくにしてもベースとなるものです。ただ、入学前に数学をやってきた方ばかりではありませんから、式を使って現実の問題を表現すること、表計算ソフトなどで具体的に解いてみること、を意識しています。定理や公式といった無味乾燥なものでなく、数学が問題解決のための便利なツールであることを伝えることが第一の目的です。
 他の講義ではもっと理論的な内容も説明しますが、その場合もなるべく具体的な数字やデータを入れて使ってみるようにしています。理論的な内容の理解は、意味がわかる、正しく使える、自由に使いこなせる、というように段階があると思います。講義では、正しく使えるところを目標にしていますので、その意味でも実際に使ってみることが大切です。使いこなせるレベルになるにはかなりのトレーニングが必要ですが、2年次に輪講科目などで対応しています。
 ゼミに在籍している学生の8割は金融関係の仕事をされています。計量的な分析業務に携わっている方も多いですが、やはり修士論文の研究となると要求される水準や内容が違ってきますので,苦労はあります。2年間の修士課程では数理的なバックグラウンドがないと難しい場合もありますから、理論面は私の方でサポートしながら、データ分析や数値計算で研究成果を出していくスタイルが中心になります。また一口に金融機関といっても、株式と債券、投資とリスク管理ではまったく別の研究テーマになります。さまざまなビジネス課題にリアルタイムで接することができるのは、私自身にとってもよい刺激になります。

Naoki Makimoto

 学生時代の数学にはよい思い出がないという方も多いと思いますが、現代のビジネスや社会では数理的な分析技術がインフラとして幅広く使われていますし、今後も確実に発展していくでしょう。ですから、自分自身でこんな分析をしてみたい、という問題意識をお持ちの方にはぜひ入学していただきたいですね。問題意識とご自身のビジネス経験があれば、数理的な分析技術は内容もレベルもさまざまなものがありますから、適したものを見つけて組み合わせることで何らかの解決策を見いだすことができると思うのです。ソフトウェアも最近では使いやすいもの数多く開発されていますので、分析のためのハードルも以前に比べるとずっと低くなっています。ぜひ挑戦してみて下さい。

<構成・舘谷 徹>