環境配慮型社会形成におけるマーケティングの役割
環境マーケティングのすすめ

 企業が商品を開発したりブランドを生み出したりするとき、環境への影響を考え配慮することは今やあたりまえとなっています。しかし、そんな企業の取り組みは消費者に的確に伝わっているでしょうか。一方消費者は、環境負荷のより低い商品をきちんと選び、消費することができているでしょうか。「環境マーケティング」が主な研究テーマである西尾教授は、「環境に配慮する」ということと消費生活との関係を意識して、各商品がどのような役割を担い、果たしているかを、企業のマーケティング諸活動の中できちんと伝えていくことが大切だと考えています。

 私の研究テーマの一つは「環境マーケティング」ですが、これはどういうことだと思われますか。
 「マーケティング」とは顧客のニーズを商品として具現化し、その普及・浸透を通じてニーズを充足させることにかかわる諸活動ですが、そのプロセスや活動において環境負荷を計測し、トータルとして環境負荷の低減をも同時にめざすのが「環境マーケティング」です。その際、単に、環境負荷の低い商品を開発し販売するだけでなく、環境負荷が消費者の使用方法などに依存する場合には、環境負荷をかけないような、その意味で正しい使用・消費方法をマーケティング諸活動の中で的確に伝えることがカギとなります。

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 このテーマへの関心が強くなったのは、私がGSSMに移ってきた95年頃からです。もともとは、消費者のブランド選択行動やマーケティング・コミュニケーションを中心に研究していたのですが、消費者が幸福であり続けるためには、社会やコミュニティのほか、地球環境とも共生していくことが重要だと考えるようになったからです。とはいえその頃は、ゼミの学生からさえ、「先生、それはマーケティング問題ではなくて、リスクマネジメントやCSRの問題ではありませんか」と言われたほどですけど。

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 その後、環境意識も変化し、環境負荷のより低い商品(エコプロダクト)がたくさん開発されるようになってきましたが、消費者に「この商品は環境にいいから我慢して使ってください」と言うのはナンセンスですよね。そもそも環境に配慮するということは、消費者個人のベネフィットとトレードオフをもつものなのでしょうか。たとえば、冷暖房の温度設定を控えめにするということは環境負荷の低減ということだけでなく、健康な生活の実践や生活コストの削減にもつながりますよね。環境配慮行動やエコプロダクトを消費することは、地球環境だけでなく、消費者個人の生活へのベネフィットも同時に充足させることが意外と多いのです。つまり、地球環境問題と消費生活との関係を理解し、それに対する企業のエコプロダクトの役割とポジショニングを明確化すること、また、それを消費者に理解あるいは実感できる形できちんと伝えることができれば、市場の受容性は高まるでしょう。これはまさにマーケティングの問題です。

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 現在、私自身は、消費者の環境配慮行動やエコプロダクトの受容性の背後にある価値構造や促進・阻害要因の解明と、それが時代と共にどう変化してきているかについて研究をしています。そして、その結果を踏まえて、国や自治体のリサイクル制度や環境コミュニケーション制度の策定に関わったり、企業の環境マーケティングへの展開支援を行ったりしています。なお、授業やゼミでは、サービスやブランディングをはじめとする消費者マーケティング全般を教えていますので、学生の皆さんの研究テーマはさまざまです。ただ最近は、環境マーケティングを学びたいと入学してくる方も増えていて、とても嬉しく思っています。
 いずれにしても、社会人である皆さんの修学時間は限られていますので、明確な問題意識をもってから入学してほしいですね。

<構成・舘谷 徹>