イノベーション創出型データサイエンティスト育成教育プログラム

経営システム科学専攻では、「革新的な教育プロジェクト(筑波大学)」の一環として、専攻が提供する8領域の科目の組み合わせからなる「イノベーション創出型データサイエンティスト育成教育プログラム」を提案しています。

「データサイエンティスト:21世紀の最も魅力的な職業(Harvard Business Review)」などと言われているように、ビッグデータの波は経営の最前線に到達し、ビジネスの現場に蓄積した膨大なデータは、その有効活用が強く求められています。しかし、一部の先進的な企業を除き、それらを扱える人材は我が国において極度に不足しています。

一方、これらのデータを処理する個別技術を身に付けるだけでは、本来の経営課題を解決することは困難です。ビッグデータを有効利用してビジネスチャンスを発見できる人材は、統計分析・データマイニング・シミュレーションといった最先端のデータ分析が可能な先進的データサイエンティストの能力に加えて、計算機システム・データベース・セキュリティ・プログラミング言語といったビッグデータを支えるソフトウェアおよび情報技術能力が求められます。また、上記の能力に加えて、分析されたデータを読み解く能力と、意思決定のために予測評価モデルを構築し経営戦略を立案する能力を備えていなければなりません。

当専攻は、設立当初からのポリシーとして、経営・数理・計算機科学の3分野融合が掲げられ、現在では8領域での融合教育を実施しています。統計・データマイニング・シミュレーション・プログラミングといったデータ分析面での研究の蓄積に加え、計算機システム・データベース・情報セキュリティ・プログラミング言語・ソフトウェア工学といったビッグデータを支える基幹的情報技術の教員や、マーケティング、金融、会計、経営といった、ビッグデータを扱うビジネスにおける応用領域の優れた教員が在籍しています。

サイエンティストイメージ

そこで、グローバルなビジネス環境で戦える先進的なデータサイエンティストを育成するため、当専攻では、

  • 先進的なデータ分析技術を身につけたデータサイエンティストの育成
  • ビッグデータを活用したグローバルなマーケティングや経営戦略策定を行える人材育成
  • ビッグデータを支える計算機システム・ソフトウェア構築が可能な人材育成
の3本の柱で、教育プログラムを構築しています。このプログラムにより、当専攻の院生は、個別の技術を習得するばかりでなく、社会的価値のある課題を発見する能力を持ち、それを解決するための意味のあるデータ活用能力を身に付けることができます。

講義一覧と履修例

データサイエンティストには、様々なスキルと能力が期待されています。ここでは、代表的な4つの人材タイプを掲げ、それぞれに対応した履修例を示しますが、あくまで参考例としてご参照ください。

<養成人材型>

  • データ分析型:企業内の分散したデータから、有意義なパターンを発見できる人材
  • 戦略モデル型:発見したパターンから、予測モデルを構築し戦略を立案できる人材
  • システム開発型:ビッグデータに対応した計算機システム構築が可能な人材
  • 課題発見型:社内のデータから課題を発見し、データ分析を推進できる人材
                                                                                                                               
データサイエンス領域科目 データ分析型人材 戦略モデル型人材 システム開発型人材課題発見型人材
ビジネスと情報
データ解析
多変量解析
応用統計
統計モデル
人工知能とビジネス情報分析
データマイニング
インターネットとビジネス情報分析
テキストマイニング
社会調査法 (他)
戦略モデリング領域科目 データ分析型人材 戦略モデル型人材 システム開発型人材課題発見型人材
ビジネス数理
最適化モデル
ロジスティクスとサプライチェーン
オペレーションズ・リサーチ
オペレーションズ・マネジメントⅠ
オペレーションズ・マネジメントⅡ
ビジネスゲーム
社会シミュレーション
知的経営システム (他)
計算機・ソフトウェア領域科目 データ分析型人材 戦略モデル型人材 システム開発型人材 課題発見型人材
計算機科学基礎
計算機科学
プログラミング
アルゴリズム
情報セキュリティ
情報システムとWeb技術
ユーザインタフェース
ソフトウェア工学
要求工学 (他)
経営課題領域科目 データ分析型人材 戦略モデル型人材 システム開発型人材 課題発見型人材
経営基礎
ファイナンス基礎
会計基礎
経営戦略論
経営組織論
技術経営論
組織文化とリーダーシップ
企業ガバナンスとマネジメント
人的資源管理
人材育成論
消費者行動
現在マーケティング論
マーケティングリサーチ
マーケティングサイエンス
ブランドマーケティング
サービスマーケティング
流通システム論
ファイナンス工学
コーポレートファイナンス
金融リスク分析
管理会計
財務会計
会計情報分析 (他)

<講義概要(抜粋)>

講義の概要は次のようになっています。   
講義名 講義の目的・概要 取り上げているトピック 分析ツール等
データマイニング 各回、前半は各機械学習・データマイニング技術の説明を行い、後半、説明した機械学習・データマイニング技術を試用した実習を行う。 線型判別とNeural Network、Support Vector Machine、分類木学習システム、重回帰分析 Weka
人工知能とビジネス情報分析 人間の知的行動を、計算機を用いて問題解決に適用する人工知能の基礎理論・応用手法を論ずる。具体的な内容としては、(1)条件に合うものを見つけ出す、(2) 観測した現象を分類する、(3)データから規則や関係性を発見する、(4)生物に学ぶ問題解決手法など、の基礎を学ぶ。講義では,これらの技術を実際のビジネス課題などに適用し、分析・解決のための演習を行う。 探索(縦型/横型探索、分枝限定法、A*)、パターン認識(階層的クラスター、K平均法、混合分布モデル、隠れマルコフモデル、TF/IDF、DTW)、学習と分類(帰納学習、CART、ファジィ推論、ベイジアンネット)、推薦システム(協調フィルタリング、潜在意味解析)、進化計算(遺伝的アルゴリズム、焼き鈍し法) R、Java
テキストマイニング テキストマイニングの基本概念を習得すると共に、 実際に実習を通じて、テキストマイニングを実行できるようにする。 形態素解析. 検証方法として,TF/IDF,適合率と再現率 Juman/KMP, Excel
オペレーションズ・リサーチ ORで利用される確率モデルを用いた分析手法の解説 確率論の基礎、モンテカルロ・シミュレーション、時系列分析 R
データ解析 様々なビジネスデータを分析するための統計の基礎を学習する.データの分類・ 要約・可視化,基本統計量,回帰分析、統計的検定や推定の考え方,及び分析結果の解釈などについて、講義と実習を交えながら学習する。 記述統計(代表値,散布度,共分散,相関,偏相関) 推測統計(検定の理論、平均値の差の検定、相関係数の検定、名義変数に関する検定(独立性の検定,適合度の検定)) 相関と因果、単回帰分析 Excel。補講として授業内容をRで捉え直した授業を実施。
多変量解析 ビジネスデータとしてよく現れる多変量データを分析するための方法として主成分分析、因子分析、判別分析、クラスター分析、数量化などの手法とそれらを利用した分析例について,講義と演習を通して学ぶ。 主成分分析、クラスター分析、重回帰分析、ロジスティック回帰分析、分散分析 R
統計モデル 共分散構造分析は回帰分析や因子分析など各種多変量解析をその下 位モデルとして包含しており、多変量解析に関する理解を深める意味でも学ぶ 意味がある。また、共分散構造分析のみならず 他の統計モデルについても扱う予定である。 因子分析,共分散構造分析,信頼性と妥当性 R
マーケティングサイエンス マーケティング意思決定における諸問題を、市場や顧客に関するデータを用いて科学的に捉えるための技術について学ぶ。特に,統計的手法を用いたマーケティングデータの解析法を解説し、その内容に関して実際に演習してもらうことで、マーケティングにおけるデータ分析の実際を体得してもらう. 回帰分析(集計型市場反応分析),因子分析(セグメンテーション,市場の規定),クラスター分析(セグメンテーション,市場の規定),離散選択モデル(ブランド選択),コンジョイント分析(製品開発),バスモデル(新製品の普及),分散分析(顧客管理),ロジスティック回帰分析(顧客管理),コレスポンデンス分析(プロダクトマップ),アソシエーション分析(ショッピングバスケット) R(基本はRコマンダーで実施)
社会調査法 社会現象を扱う計測技術の進展により、収集されるデータの幅と深さが飛躍的に広がっています。その一方で、対象理解の進展に伴って、少数ケースを対象とするインテンシブな質的調査の必要性が高まりつつあります。質的調査を通じて経験した混沌の中から有意義なパターンを新たに発見し、操作的に検証可能な仮説へと統合、そしてその直接延長上にアンケート調査を設計、分析する。授業では、情報共有やコミュニケーションの促進にもつながるこれら一連のプロセスについて学びます。 質的調査法、アンケート調査法、データのRelevancyとAccuracy、社会学的モデル思考 Excel、 KJ法など
計算機科学基礎 計算機による情報処理の原理について、基本概念と基本ソフトウェアの範囲を中心に学ぶ。 コンピュータのハードウェア、プログラムの動作原理、オペレーティングシステム、言語処理系、ファイルシステム、ウィンドウシステム Unix
テキスト処理 多様なテキストファイルやWebページなどに含まれるテキストから、必要な情報を抽出して整理し、分析に使用できる形に変換できるようになる。ゆれのある表記に対して、整理して名寄せができるようになる。また、変換後のデータを関係データベースに投入し、基本的なクェリーによる抽出ができるようになる。 CSVファイルの読み書きと基本的なRubyによる処理の記述。表記の集計と編集距離を用いた統合。 正規表現による正規化、抽出。 Webサイトの構造とXPathによる要素指定、Rubyによるスクレイピング。 RDBへのデータ投入とSQLによる基本的なクェリー。 Ruby、SQLlite3
講義一覧イメージ
経営システム科学専攻

修了生のインタビュー

辻井康一 辻井康一

旅行予約サイトのシステム企画を担当しています。旅行業界においては店舗の閉まった夜間時の予約申し込みが増加しており、当社もそれに対応すべくWebでの旅行予約受付に注力してきました。Web化によって、顧客や宿泊施設をはじめとしたさまざまなデータ収集が容易になった一方で、社内にデータ分析の専門家がおらずデータを活用できていないという課題がありました。そこで企画担当である私がデータ分析の知識を得ることで、これらのデータを活用したいと考えたのが入学の理由です。研究テーマはテキストマイニングを用いた口コミ情報の分析で、予約サイトに届く口コミ情報を分析・有効活用することでリピート率の向上や宿泊先へのサービス改善などを目指しました。じつは私は文系出身で、統計やテスキトマイニングなどの知識は皆無でしたが、授業やゼミなどを通じ基礎から習得することができました。また、指導教員である津田先生の勧めで論文をジャーナルに投稿したところ掲載が決まり、それを契機に博士課程への進学を決意。早期修了制度を利用し、わずか1年間で博士の学位も得ることができました。私の仕事は企画職ですが、ここでの学びを通じデータサイエンティストのスキルも身につけることができ、ビジネスパーソンとして一つ上のステージに立てたのではないかと思っています。


西郷彰 西郷彰

『リクナビ』『じゃらん』『SUUMO(スーモ)』といった リクルートグループのWebサービス改善や、経営の意思決定及びマーケティングの企画立案のための各種分析などが私の仕事です。例えば、サイト改善においては、サイトを利用するカスタマーへ最適な情報を届けるためのレコメンデーションやパーソナライゼーションなどに取り組んでいます。私は社会に出てから10年ほどデータ解析実務に従事し、実務での経験は豊富でしたが、これらを体系的に学んだ経験がありませんでした。そんな折、あるプロジェクトでご一緒させていだだいたマーケティング分野の先生からGSSMを勧められたのが入学のきっかけです。GSSMには、マーケティング、オペレーションズ・リサーチ、ファイナンス、コンピューターサイエンスなど多様な科目がありましたので、自分が雑然と獲得していたスキルの棚卸が広い範囲でできました。また、指導教員である佐藤先生は、マーケティング領域でベイジアンモデリングに取り組んでいる日本では数少ない研究者です。この5年くらいで実務でもベイズが普及していくなと感じていたため、まさにここだと思いました。結果的には、自分の実務における興味とマッチした最先端のスキルを手にいれ実務へのヒントを得ることもできました。質の良いINPUTが、OUTPUTを加速させるというのが私の持論です。そういう点では、GSSMは、データサイエンティストの"筋トレの場"だと思います。


上田圭一 上田圭一

1996年から2007年まで主に国際線の搭乗系システムの企画・開発を担当していました。その後、ニューヨークに赴任したのですが、その頃からキャリアアップの手段としてMBA取得を検討し、帰国翌年にGSSMに入学しました。私の問題意識は国際線ターミナルのCIQも含めた様々なプレイヤーによるオペレーションの最適化でした。海外からの観光客誘致への注力が必要である日本においては旅客ターミナルの拡張余地が少なく、国際線ターミナルのオペレーションは重要課題だと考えたからです。研究では、効率的なオペレーション実現のために国際線での普及が進んでいないセルフサービス機に着目。「マルチエージェントシミュレーションによるシナリオ分析」を行いました。それまでプログラミングの経験はありませんでしたが、指導教員である倉橋先生の指導を受けながら、まずは小さなシミュレーションプログラムを作成。そこから徐々に拡張させていき、最終的には1000ステップ程度のプログラミングを完成させ、限定された条件ではありますが説明力ある結果を得ることができました。現在の私は旅客ターミナル運営会社の企画部に属し、国への報告や全社の計画のとりまとめ、調査などを担当しているのですが、GSSMで社会調査法や多変量解析・データマイニングなどを学んだおかげで、これらの業務における業務効率や品質も格段に向上させることができたのではないかと考えています。


石井実 石井実

GSSMに入学したのは銀行でファンドマネージャーをしていた頃です。金融には膨大なデータがあり、ここから流行現象とバブルの関係を見つけるのが入学時の問題意識でした。そしてGSSM終了後の2004年にGSSMのクラスメートたちとアークエンジンというリサーチ会社を起業、金融や家電・広告会社などのマーケティングデータ分析を請け負いつつ、博士課程に進学し研究を継続してきました。私の研究目的の一つはPOSデータを分析し、レコメンドシステムを作成するというものなのですが、入学当時はレコメンドという概念自体が広く知られておらず研究が停滞した時期もありました。そんな時も粘り強く指導してくれた西尾先生には大変感謝しています。私の現在の関心は、ビックデータを活用した新しいビジネスモデルの構築です。米国ではビッグデータをビジネスに取り入れる動きが盛んになっており、例えば、映像コンテツンや音楽の世界では、One to One でいかに収益を上げるビジネスモデルを構築するかに関心が集まり、多くのベンチャー企業が誕生しています。その一方で、注目されているビックデータを活用したレコメンドシステムですが、まだまだ数理モデルが追いついてないのが現実です。今後は、研究者として数理モデルの構築にも積極的に取り組んでいきたいと考えています。

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経営データサイエンス研究室・共同研究募集

当専攻では、データサイエンス研究に携わる教員・研究者が中心となって、経営戦略、マーケティング、金融、会計、SCM、ITなどの研究を行なう、経営データサイエンス研究室の準備を進めています。企業等との共同研究も多くの実績を出してきており、今後もこれらの研究を積極的に推進する予定です。ご共同研究など、ご興味のある方は、以下までご連絡ください。

経営データサイエンス研究室事務局 dsm-labo[at]gssm.otsuka.tsukuba.ac.jp